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Travelling Fellow in Korea


2019年に骨折治療学会の学会賞を受賞しました。その発表内容は屍体でのiMAPの薬物動態を調べた研究でした。受賞者には翌年のKorean Fracture Society meetingで発表する機会と病院見学を兼ねての国際交流の機会が与えられるのですが、コロナの流行で中止になりました。今回ようやくコロナも収束に向かい4年分をまとめた8名の受賞者とJSFRのinvited speakerも含めて総勢20名弱でKFSに招待されました。受賞者には病院見学を含めたtravelling fellowのプログラムもついてきます。




私は、大邸にある慶北大学を訪問することになりました。これまでも何かと縁のある埼玉医大の森井先生と台湾から参加の先生の三人でご一緒することになりました。

大邸は人口250万人の韓国の中央に位置する韓国第3の都市です。ソウルから電車で2時間弱の距離にあり、関空からは直行便が飛んでおり、北海道より近いです。


屋台があるマーケットに行って英語が全く通じないなかB級グルメを堪能したり、近くにある600mほどの山に登って市内を一望したり、市内の様子も見てみました。

また、ちょうど泊まったホテルの近くに「韓方」の一画もありました。中国から始まった中医学は日本に入って独自の進化を遂げて「漢方」になり、韓国に入って独自の進化を遂げたものが「韓方」です。Tourist informationの方が日本にも住んだことがあって、日本と大邸の歴史についてたくさん教えてもらいながら町を案内してもらいました。日本と韓国は歴史的に微妙な関係にあり、ここ数年国家元首の関係はかなり悪化してましたが、民間では切っても着れない関係なんだなと思いました。





慶北大学病院は、1907年から歴史のある施設で市内の中心部にあり、外傷を多く引き受けています。教授のCHANG-WUG OH先生は、とても気さくで常にユーモアを振りまいていますが、周囲には細やかな目配せもされていました。レジデントの先生はピリピリしているので普段はかなり厳しく指導されているのでしょう。週に何件も骨盤骨折の手術があるのに今週はたまたま少なく、手術が2件もキャンセルになったと申し訳無さそうにされていました。



毎日ディナーパーティーの歓迎を受けて、ほんとによくしていただきました。たまたまその席でMorning lectureの依頼を受けてCLAPを紹介する機会を得ました。30分ほどの時間で紹介を行い、大学のメンバーと深いdiscussionができました。CW Oh先生もかなり興味を持って話を聞いていただき、丁寧に説明することで納得していただきました。学会の発表は5分で質疑応答の時間も限られるのですが、ここでゆっくりと時間をとって議論ができたのはよかったです。



さて手術見学ですが、1例はhypertrophic non union でnailの直径が不十分で近位は1本、遠位は2本ですが短くてバックアウトしているのでネイルの変換で行けるだろうとの計画です。ただ、初回受傷時にネイル刺入部にMorrel Lavallee Lesionがあり、植皮をしたのでそれをどう避けようか?最悪感染があればどうしようか?が議論になっていました。術中髄内の肉芽を病理に提出したところ好中球の浸潤が見られたとのことで、感染を疑いセメントロッドの留置に変換となりました。アルゴリズムに従って粛々と作業が進められていく手さばきは見事でした。

 ちょうど当院でも同じようなhypertrophic non unionの症例がありました。術中に迅速診断の病理を提出することはないのですが、術中の所見で感染を疑えば髄内釘を変換するところまでは変わらず、iMAP pinを設置する判断基準にはなると思います。そのあたりもdiscussionができて興味深く話を聞いておられました。


 他にも深夜に来た下腿開放骨折Gustilo Type IIの症例を朝から髄内釘での内固定、大腿骨転子下骨折に対して側臥位で髄内釘を設置する手術がありましたが特に問題なく終了。


最後に苦労している症例が。脛骨近位の骨肉腫を切除した後、腫瘍用のインプラントに置換するも感染を併発。インプラント抜去するも感染が沈静化せずに、関節固定に向かうために創外固定を立ててから複数回手術の症例。掻爬、抗菌薬セメント留置→再燃を繰り返しています。CLAPがあるので抗菌薬セメントを使った経験がほとんどないのですが、「CLAPがあればどうするんだ」と質問も受けて、色々とdiscussionをすることができました。全く新しいことも、柔軟に理解を示して、受け入れようとする姿勢は流石と思われました。

 もうすぐiMAP pinの医療機器としてのClass IIIの区分が通りそうです。そうすれば海外に正式に紹介することができます。いずれはそういう日が来ることを願って。



大邸のプログラムが終了するとKSF meetingのためにソウルに移動。KFS主催のdinner partyでは、台湾、タイ、シンガポールなどから参加している先生もいて、ようやくコロナも落ち着いて自由に話ができる時代が戻ってきたと実感します。ただ、日に日に私の

ズボンをしめるのがきつくなるのは問題です。



KFSは日本のJSFRほど規模は大きくなく、金浦空港に隣接するホテルでの開催。メインルーム2つでプログラムが行われました。我らがJFSRの会長、最上先生の講演も拝聴しました。

午後のセッションでは日本人の発表が行われていきました。私の発表に興味を持ってくださった先生から質問がありました。やはり5分では伝わりきれないところを質問されました。ともあれ興味を持っていただいたのはありがたいことです。みんな無事に発表が終わってよかったと懇親会では祝杯を上げました。




なかなか1週間を超えて病院を留守にすることはなかったのですが、コロナが収束してまた海外に自由に行ける時代がやってきたのは嬉しいことです。face to faceで国際交流できたのは最高の経験になりました。


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