FRIの多施設研究がBJJに掲載されました
- 圓尾 明弘
- 2 日前
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更新日:19 時間前
国内の10施設におけるFRIに対する治療の後ろ向き観察研究を行った業績がBone and joint journalに掲載されました。この研究に携わっていただいた多くの先生には、多大な労力を費やしていただいたこと本当に感謝申し上げます。
国内のトップレベルの施設が参加しているので、もともとFRIの治療も問題なくされていた施設ばかりです。治療技術に問題がない施設において、CLAPを導入する前とCLAPを導入してからの時期を比較していることになりますので、「感染が治らない」をoutcomeにしても、きっちり治し切るので感染制圧率ではCALPの介入によって差は出ないです。
【有効性】
「どれくらいスッキリ治ったか」の指標として、最初の手術だけで治ったか?で差が出てきます。インプラントを抜く必要がないので、一旦抜去して再設置することが少ない。骨を温存するあるいは感染巣に骨移植もするので骨再建にかかる手術回数が減る。感染がくすぶって繰り返しの掻爬が減る。結果的に軟部組織再建などの追加手術も減る。等いろいろな要因が考えられますが、様々な要因によって「再手術率」はCLAP群で有意に減りました。
「再燃率」はわかりやすい指標ですが、CLAP群で有意に減りました。
この研究は後ろ向きの観察研究ですので様々なバイアスがあります。この単純に比較しただけの結果は様々な交絡因子の影響を受けるのですが、それらの影響を調整した解析を行ってもCLAPが有意に再手術率を減らして再燃率を下げることがわかりました。
【安全性】
さらに有害事象として急性腎障害があります。群間を調整した比較でもCLAP群とnon-CLAP群で発生率に差はありませんでした。急性腎障害の指標はKDIGOの分類に準じて、血清クレアチニン値がベースラインから「0.3上昇、1.5倍以上」になるとgrade Iの急性腎障害となります。無症状で治療が終了するともとに戻ることがほとんどです。この程度の急性腎機能障害が7%位は起こっていることが、実臨床においては見過ごされていることも多いのではないかと推測します。福島の原発事故において、甲状腺を調べると潜在性の甲状腺癌がたくさん見つかって、因果関係が疑問視される事態が発生しています。CLAPではゲンタマイシンがやり玉に上がりがちでしたが、抗菌薬や鎮痛剤など腎障害をきたす薬剤を使うFRIの治療において、局所に用いるゲンタマイシンの腎毒性はそこまで影響があるわけではないことが証明されました。ただし、今回参加した施設は院内の倫理審査を受けて導入した施設ばかりで、倫理審査では安全性が必ず指摘されます。安全性のためにゲンタマイシンの血中濃度をモニタリングしてトラフ値を超えないように投与濃度を調整したことを守ったことが条件になります。逆に腎障害をきたす因子として、「高齢者」「MRSA薬の使用」が挙げられました。これらの条件に当てはまる場合は、投与濃度を調整したほうがいいかもしれません。
ゲンタマイシンの細胞毒性として「骨癒合」に対する影響も危惧されましたが、それも群間の調整を行った解析でも、差が出ませんでした。CLAPしたら骨つきにくい印象もありましたが、そうでもないようです。
このように国内でも骨折やその合併症の感染の治療を確実に行える10施設のFRI治療において、CLAPは手術回数を少なく「スッキリ治しきる」ことができて、「再燃も少ない。」「AKIのリスクも従来と同等」であり、有効かつ安全な治療であることが示されました。
これで終わったわけではなく、さらなるステップアップとして後ろ向き研究の第2弾がはじまっており、10施設を20施設以上に増やして症例集積が終わっています。その次は前向き研究を計画していきたいです。
また、今のレジメをさらに最適化するために、局所の有効性の精度を上げるために原因菌の解析を進めています。原因菌の特性によって投与濃度を調整したり、投与薬剤を調整したりすることで更に安全かつ有効な治療を目指せます。
局所の安全性の精度を上げるために各種細胞に対する細胞毒性をin vitro, in vivoで調べています。それがどのように骨内で分布するか流体力学的な検討も行っています。
このように臨床研究、基礎研究を進めていくことで、今後も進化を続けていきたいと思います。

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