top of page
第2回セミナー概要.jpg

13:30から始まったワークショップは、今回はじめての鶏肉を使ったデモの試みです。

iMAP iSAPを使いこなすにおいて、NPWT(negative pressure wound therapy)を用いた軟部組織の扱い方は重要です。整形外科医にとってはまだ馴染みがないNPWTを使うハードルもあります。また、iSAPではdouble lumen tubeを用いていますが、その重要性を実感してもらうこと、それをどのように配置すれば有効に perfusionできるのかを体験していただけれるのではと考えました。

 Table instructorとして製鉄記念広畑病院と加古川医療センターの整形外科、形成外科のチームに加えて、千葉大学の姫野大輔先生にも加わっていただきました。

 今回、iSAPの手技を再現するのに、スーパーで買物をしているときにふと思いついたのが、「鶏胸肉」です。軟部組織が損傷を受ける場合に、骨に向かって斜めに組織が切れ込んでいることが多く、そこは死腔となる可能性があります。鶏胸肉はちょうどよい大きさで、安価に大量に再現性のあるサンプルが入手できます。

 損傷を受けた創部に見立てて、ポケットになったところにチューブを配置します。それによって腫れないようにするとともに抗菌薬を流して回収する経路が構築されます。実際にどれくらいの範囲に広がるかを色素を用いて、視覚的に確認することができます。それでも足りなければ、もう一本追加するなどの処置が必要です。

 チューブをNPWTの回路に組み込んで深層と浅層から確実に陰圧をかけることが重要です。それをどうやって構築するかは、一度見てみないとなかなか理解できません。熱心に動画を取る皆様の姿を見てやってよかったと思われました。

 <iSMAPのデモ>

​ 次に大腿骨骨折モデルですが、ソーボーンに軟部組織に見立てたスポンジを巻き付けて、チューブを配置して更にiMAP pinを挿入します。ピンの後ろから入れた液が髄内に拡散する様子が見て取れます。あえて髄内を赤色、軟部組織を黄色の色素で流すことで視覚的にどのように液が流れていくのかを知ることができます。髄内と軟部から注入された液が、最終的に混じってオレンジ色になるとうまく抗菌薬の回路が構築できたことがわかります。

 術中はこの経路で洗浄することが重要で、更に術後に抗菌薬がスムーズに流れることが確認できます。

P1011802.JPG
P1011817.JPG

​ iMAP iSAPの概念となる、局所持続抗菌薬灌流=`LCAP:Local Continuous Antibiotics Perfusion`を県立加古川医療センター整形外科の高原先生が解説します。一般的な抗菌薬の使われ方と、局所にゲンタマイシンを使用する必然性、実際に治療を行う上で安全性についての情報を提供しました。

P1011803.JPG

さていよいよ症例検討です。いずれも苦労した症例です。

新潟大学 山下先生 

 慢性骨髄炎にilizarovで治療するもうまく行かず、広背筋皮弁+masqueleteに変更するも感染が再燃。絶対抜きたくないプレートを温存すべくiMAPを導入。再発に対して2回目のiMAPをABKで切り抜けてなんとか感染制圧。3年以上の経過で再燃なく経過している。iMAP導入に際して職場の上司の理解を得るために、様々な苦労をしたのはよくある話で・・・

鹿児島市民病院 上野先生

 下腿開放骨折にG IIIbに対して、掻爬、創外固定を行い、二期的にプレート固定を行うも感染を合併、Masqueleteに切り替えてセメントを留置、second stageに向かうも感染を合併してなかなか最終固定に行けずに、相談を受ける。感染は沈静化していないが、まずは骨折部の安定性が優先されるので、プレートから髄内釘に変換。髄内釘に沿って抗菌薬を移行させることで感染を制圧しつつ、骨癒合にも有利な選択肢。結果的に感染は沈静化して、CRPの再上昇はあったものの骨癒合得られて歩行も獲得できている。

昭和大学 吉川先生

 大腿骨の開放骨折が、内側に開放創があると陰部と近いので腸内細菌に汚染されるリスクが高くなる。やはり感染を合併して、洗浄、掻爬を繰り返すも感染をコントロールできず、患肢温存も危うくなったところからiMAP iSAPを導入。起死回生のCLAPによってみるみる創は改善。骨再建、軟部再建もうまく行って最終的に機能肢として歩行もできるようになったとの報告。最期にちゃんと歩ける様子を見て一同ほっと胸をなでおろすことに。

​*いずれの症例も従来の治療として、洗浄、掻爬を繰り返すも感染は制御できず、CLAPを導入することで感染が制圧できている。もっと初期の段階からCLAPを導入することで、失う組織は少なくなり感染制御も楽にできたのではと思われた。

 

宮﨑延岡病院 村岡先生

 THA後の感染でインプラント温存を図るためにiSAP iMAPを導入した症例 iMAPをステム周囲にiSAPを関節近傍に配置することで骨髄から関節内にperfusionする経路を構築。その経路で洗浄して抗菌薬を移行させてインプラントを温存して感染を制圧することに成功。

​非常に活発な討論ができました。

P1011841.JPG
P1011845.JPG
20191109_112831706_iOS.jpg

次に19:00からは懇親会場に移って、食事をしながらのcase discussionです。

​お酒もはいってdiscussionも盛り上がります。感染の話はなかなか出せずにミゼラブルな結果に終わることが多いのですが、CLAPによってrescueできた症例や、今後はCLAPを導入することで改善点が見いだせるので自然と明るい雰囲気になります。

トリは千葉大学の姫野先生のプレゼン。

 これには皆様衝撃を受けました。全身に膿瘍を作るたちの悪い菌が大腿骨に波及して病的骨折で敗血症。救命のために切断もやむを得ないところですが、感染を制圧するために感染創に髄内釘を挿入してCLAPを導入しました。なんとか感染は制圧できて命の危機は過ぎましたが、その後の経過中、骨吸収が進んで不安になるレントゲンを見せられました。それもbone remodelingが起こっているがゆえの過程と判断。最終的に機能肢として歩行もできるようになりました。

​ これを見せられると感染制御の概念が変わりますね。感染制御のためには、骨折部の安定性を優先させるために内固定してCLAPを導入。徹底的な掻爬よりも抗菌薬を通る道を構築することのほうが重要。

bottom of page