Basic research

CLAP研究会では、これまでに行ってきた基礎研究の成果を紹介していきます。
1.細胞毒性
高濃度のゲンタマイシンが、局所に投与されるとその部位の細胞の障害性が危惧されます。骨髄内では、骨髄内の骨芽細胞や破骨細胞、骨の前駆細胞など、また関節であれば関節軟骨や滑膜細胞、皮下であれば脂肪細胞、筋細胞など、高濃度の抗菌薬の影響は少なからずあると思われます。
骨髄内の細胞を採取して異なる濃度のゲンタマイシンに暴露して、その影響を検証したのがこちらになります。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38425312/
ゲンタマイシン750μg/mlで細胞に影響が出ることが、わかってきました。しかし、実験では同じ濃度の抗菌薬に暴露し続けるので生体内で投与された抗菌薬が血液や浸出液で希釈されて拡散される環境とは異なることを加味して解釈する必要があります。
2.薬剤耐性
高濃度のゲンタマイシンは、細菌が耐性遺伝子を持っていても、耐性機構を上回れば菌が死滅すると推測されます。
MRSAは、β-ラクタムに対する薬剤耐性ですので、アミノグリコシドのゲンタマイシンは関係ありません。ただ、MRSAの中にもアミノグリコシドの耐性遺伝子を持つ菌もいることは事実です。現在知られている主なアミノグリコシド耐性遺伝子は3種類あって、そのうちの1種類の耐性遺伝子を持てば、高度の耐性を持つことが知られています。複数の耐性遺伝子を持つこともあり、その組み合わせによって薬剤耐性が変わることも知られています。産業医大では、院内で分離されたMRSAの菌を調査して、アミノグリコシド耐性遺伝子を持つものを抽出し、そのゲンタマイシンのMICとMBECを調査する研究を行いました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39191399/
aac(6')-aph(2″)を持つ菌株はMICが16以上、MBECが256以上になる傾向があることをしましました。この耐性電子を持った菌株には注意する必要があると思われます。ただ、長時間の暴露によって死滅する菌株も存在することより、臨床現場で2週間の曝露により効果が得られている可能性もあると思われます。
3.流体力学
はりま姫路総合医療センターの敷地内にある兵庫県立大学の工学部の高垣先生と共同研究を2019年から行ってきました。iMAP から注入された抗菌薬が骨髄内でどのように拡散するのか、流体力学的に解明することを目指して、研究を続けてきました。
骨髄内は、もともと静水圧があり、海綿骨構造があり、脂肪と油の成分が混在しており、水溶性の抗菌薬であるゲンタマイシンが、拡散することを計算するには多くの時間がかかりました。現在2ml/hで投与していますが、微量投与することで複雑な構造の中を拡散していくモデルができました。骨髄内でどのように薬液が拡散するか、視覚的に理解しやすいかと思います。論文化に向けて作業を開始しているところです。